「中国人に絶対負けない交渉術・私流」(1)

最近、Darling持ち帰りの
『中国人に絶対負けない交渉術』『Culture shock! Japan』を読んだ。

「世界の若者会議2007」に論文を発表して以来、こういう中日の付き合い問題をあまり文章化していないから、家族の定番議題だし、そろそろ頭のメモリーを釈放させないと、爆発してしまいそうなこのころだ。
少しずつ綴っていく。

まず吉岡健氏の『中国人に絶対負けない交渉術』というと、作者は結構中国、中国人の実生活に参加していて、基本的に現実に即していると思うが、上目線で見ているようで、内容は日本人が中国人とうまく付き合うのに役立つ中国人のいいところをあまり取り上げていないと思われる。後半のテクニックのまとめは、中国に進出しようとする日本企業にとっては、参考となるだろうが、前半の多くの中国人論について、これらを知ったら、本当に中国人に負けないのかと正直思うところだった。

取り上げられているトピックの中で、特に気になるのは、「日本人は職人気質で、中国人が重視するのは利、金銭」というまとめ方だ(P18-23)。
日本人のような職人気質はないと思うが、「利」をほかのものより必ず重視するわけでもない。
この結論は、作者がビジネスの経験から感じたことだと思うが、企業としては、NPOやNGOでなければ、生きていくために、「利」を追求するであろう。倒産しかけの日本企業でも、職人気質より利であろう。実際、日本社会でも、企業の不祥事がよく耳に入る。

しかし、作者をそのように思わせた理由もあると思う。例えば、中国にある日中合弁会社で、一般の場合、コスト60元のBクラスの製品で市場ニーズを満足でき、利益100元を得られるなら、コスト80元のAクラスのもので同じく利益100元しか得られないとしたら、中国人は、前者を選択するのが多いです。トップクラスのものではなければ市場に出せないような日本人の職人気質になろうよと言われても、すぐ納得しないであろう。こういうとき、職人気質や実利重視の話より、そもそも会社は何のために存在しているか、どうして日本から中国に進出してきているか(逆な場合も同じ)、どんなブランドを作りたいか、どんな価値を提供したいか、などに戻した方が良い。こういった会社の方針は、合弁する前に合意を取るべきな話で、途中でよく振り返って強調することが大切だ。要は、職人気質か、そのときの実情に合わせて対応するのが会社の目的目標実現の手段である。日本人の価値観で中国人を押し通すのは、とても無理だと思う。逆に、アメリカや日本のような資本主義出身の人は、お金なら動かせると思っている中国人も多い。

中国人の価値観、或いは経営理念といえば、目先の利益にとらわれがちだとよく指摘される。改革開放からまだ30年なので、老舗といえる近代企業は殆どない。
激しい競争の中で、ちょっとお金を儲ければいいと短い目でしか見られない中小企業はまだ多数。長いスパンで企業を経営して、世界中に通用するブランドを作ろうとする中国企業は増えていると思うが、まだまだ少ない。中国は、そういう変動の激しい時期にあるということを理解したほうがいい。

実利について、中国は古くから自分の実利哲学がある。孟子は「富贵不能淫,贫贱不能移,威武不能屈,此之谓大丈夫」という中国人なら知っているはずな有名な言葉を残している。中学校の教科書に載っているし、こういう系は、基本的にみんな暗記できていたと思う。意味は財産や高い地位に惑わされることなく、貧困や低い地位に移されることなく、権威や武力でも屈服されることないようにできる人こそ、所謂一人前の男である。(日本語の定訳はすぐ見つからなくて、英語を付けておく。It is a true great man whom no money and rank can confuse, no poverty and hardship can shake, and no power and force can suffocate.)

政治上では、結構都合のいい思想でしょう。よって、儒家思想は、昔から公的思想として、朝廷や政治家に愛用されている。今でも、メディアはこれを行動基準として使って、不適切な行為を正そうとしている。例えば、
「観光ツアーの富裕層、財産に惑わされないで」(ちなみに、20年前の日本バブルの轍を踏まないようにと警告されている)

しかし、民間レベルで考えると、今はそういうことができない人は多くいるが、できる人は馬鹿にされるより、大変尊敬されて、むしろそれを目指そうとしている人もいると思う。特に、自分のポリシーを持って、潔く生きていきたい人の場合。また、自分も含めて、学問の研究に励んでいる人とか、、実利のために動いていないのが枚挙にいとまない。

日本の経営哲学の源である、鈴木正三の禅の倫理、石田梅岩の心学、渋沢栄一の「論語と算盤」などはいずれも中国人にとっては馴染みがあり、認めている経営倫理である。例えば、儒商というのがいる。

ついでに言っておきたいのは、儒家思想だけではなく、道家思想もよくあげられている。
『左手は孔子、右手は荘子』という本に対して、Robin Liなどの企業家は賞賛している。
NetEase CEOの丁磊は老子「道徳経」の自然無為を経営に取り入れている。

経営倫理の浸透は教育と共に浸透させないといけない中国の現実だが、中国の伝統文化の知恵を活かして、国際的な視野を持っている中国人はどんどん増えているので、中国人は「金儲けが一番」、またそういう「決め付け」が広められたらちょっと困る。どちらかというと、それを信じて、行動してしまうと、最も損しがちなのは、思い込んでいる本人だから。

あと、「中国人に絶対負けない交渉術」の中のコラム情報は、個人のつぶやきのように書かれているので、事実に合っているかは別として、中国人との交渉にはどうつながっていくかは疑問だ。それぞれつぶやく自由があるし、細々な指摘は、ここにて略す。

さて、そろそろ「中国人に絶対負けない交渉術・私流」に入りたいと思う。まず、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」ということだ。吉岡健氏は「彼」のことと比べて、「己」への認識を基本的に書いていない。

とりあえず、これまでの「日本人論」はどんなものがあるか、見てみよう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E8%AB%96
ちなみに、中国で一番人気なのは、アメリカ文化人類学者 ベネディクトの『菊と刀』である。中国人が理解している日本人の性格といえば、結構その本に影響されていると思う。

自分も、7年前「日本人の恥ーー『菊と刀』をめぐって」という卒業論文を書いていた。
今でも、一般的な日本人は世間や他人の目を基準にして動いていると日々感じている。日本人とはこういう人間だとそんなにまとまらないと主張している方は、とりあえず上記URL掲載の日本人論の方法論を論破してみてください。

では、読書の時間だ。

This entry was posted on 木曜日, 4月 22nd, 2010 at 10:56 AM and is filed under Cross Culture, Formal Posts. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

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