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『祝婚歌』 吉野 弘
二人が睦まじくいるためには愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだとうそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかがふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは相手を傷つけやすいものだと気付いているほうがいい
立派でありたいとか正しくありたいとかいう無理な緊張には
色目を使わずゆったり ゆたかに光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら生きていることのなつかしさにふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そしてなぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい
吉野 弘
・第六詩集(詩画集)「風に吹かれて」
・おしゃべりポエム 風の記憶 著書吉野弘
・続・吉野弘詩集 収録作品
